野地秩嘉著「渡辺晋物語」に真理ちゃんの記述が (1)「恋する夏の日」の企画会議

野地秩嘉著「渡辺晋物語」 マガジンハウス 2010年10月21日発行

 正月早々、時間があったので野地秩嘉著「渡辺晋物語」を読んでみた。一代で日本を代表する芸能プロダクションを築き上げた渡辺氏についての本であり、真理についても何か書かれていると思ったからだ。

 クレージーキャッツザ・ピーナッツキャンディーズなどの記述が多かったが、真理についてのエピソードもあった。それは、毎週金曜日の午後に開かれる企画会議であった。当時真理担当の音楽ディレクターであった中島二千六氏が語っている。

 中島氏が「恋する夏の日」の企画説明を渡辺晋社長の前で行った時、真理がテニスコートにたたずんでいる光景を事細かく説明する。それに対して渡辺氏は、「このテニスコートだが、場所はどこだ。軽井沢かそれとも山中湖か」と聞いたという。

 中島氏はまさかテニスコートの場所まで特定しろとは想定していなかった。そして、覚悟を決めて「社長、もちろん軽井沢です」と答え、「そうか。そうだろうな」と渡辺氏は企画を受け入れたという。

 しかし、渡辺氏は続けて「歌詞は一部やり直しだ。このままだと真理にボーイフレンドが実在することになり、それじゃダメだ。ファンは真理が恋人を募集していることを望んでいるんだ。だから、彼女がテニスコートで待っている相手はあこがれている人物にしておいた方がいい」と修正を命じたという。

 それでも中島氏によると、「恋する夏の日」が、企画会議の中で一番短時間で切り抜けられた楽曲であったという。